WORKS

T HOUSE

T HOUSE

CATEGORY: HOUSE

CONCEPT:
新築の分譲マンションのリノベーションを依頼された時、現状で充分住める新しく綺麗な住環境をどのように活かし空間を作り上げていくかが課題となった。現場に何度も足を運び既存の空間を眺め紐解くなか、立地や厳重なセキュリティや利便性に優れながら住む人が触れるものや設えは大量生産された既製品の組み合わせ、豊かな暮らしの定義の中にデザインするという行為だけ置き去りにされたまま高級という言葉を謳っているように見え、そこに今回の答えがあるのではないかと感じた。

施主との協議を重ね、かき殻を用いたアップサイクルの塗料を空間全体に用いること、グリーンを空間に取り入れるという二つの要素を空間の軸として考える事となった。

マンションならではの景色を変えるために、既存のサッシの木枠に合わせ上からボードをツラで追い貼りし、壁面はリシンの最小粒よりも小さく繊細なテクスチャーを持つかき殻塗料で一様に仕上げ、壁面のエッジや既存木枠の下地を柔らかく繊細にコーティングすることで既製品サッシと木枠が連なる所謂よくみる風景を消失させ空間全体にとってキャンパスのような立ち位置に見えるように考えた。その上で既存什器や建具は機能は活かしながら木目や石目がプリントされた建材部分を取り除き、ラワン材の木目を選定しかき殻塗料の繊細さに合わせながら木目の透かし具合を調整し染色している。

観葉植物は単純に鉢植えしたものを置くのではなく、高層階の角面という環境の中でより身体的にグリ―ンと向き合えることができないかを考え、書斎とダイニングの境界線上にグリーンを配置し、二つの空間を柔らかく有機的に仕切ったうえで床と鉢とダイニングのベンチを一体化した建築的な装置をマイクロセメントで同素材に仕上げた。ダイニングベンチの高さから上部分を鉢として彫刻的に台形に形作ることで鉢の法面はベンチの背もたれにもなり、そこに座ることで葉は自分の頭より上に存在し、まるで葉の木漏れ日の下で木の幹に持たれてひと休みするように普段はグランドラインでしか味わえない緑に包まれ触れ合える特別なひと時を高層階で浮遊感を持たせながら体験することができる。より緑を空間全体に溶け込ませるために解体して現しになった躯体天井の小梁部分の欠如箇所を鏡面で繋ぐことで日々の暮らしが無機質なコンクリートの天井に投影されることとなる。

私自身が生まれた時から十数年間マンションで暮らしてきた経験を踏まえ、大量に生産された既製品やプリント柄の建材を組み合わせたものに囲まれて毎日暮らすことより、自分の思いがこめられた空間で日々を過ごせることの方が豊かな日々を過ごせるのではないかと思う。古いヴィンテージのマンションではよく行われている手法を、どこでも拝見できるチェーン店のような一様な風景の日本の新築マンションの内部空間において、その安心安全な機能は活かしつつも住む人の思いを込めて空間生まれ変わらせるという昨今のマンションにおける住環境の作り方に対する新たなフックになってくれればと願っている。




GREEN:
小田康平(叢)

PHOTO:
足袋井竜也

完成日:
2024. JUN

所在地:
広島県広島市中区
鉄筋コンクリート造15階建て
50.0㎡(15.1坪)

MEDIA:
designboom
archdaily
archello
NOTESBOOK
archilovers

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CONCEPT:
新築の分譲マンションのリノベーションを依頼された時、現状で充分住める新しく綺麗な住環境をどのように活かし空間を作り上げていくかが課題となった。現場に何度も足を運び既存の空間を眺め紐解くなか、立地や厳重なセキュリティや利便性に優れながら住む人が触れるものや設えは大量生産された既製品の組み合わせ、豊かな暮らしの定義の中にデザインするという行為だけ置き去りにされたまま高級という言葉を謳っているように見え、そこに今回の答えがあるのではないかと感じた。

施主との協議を重ね、かき殻を用いたアップサイクルの塗料を空間全体に用いること、グリーンを空間に取り入れるという二つの要素を空間の軸として考える事となった。

マンションならではの景色を変えるために、既存のサッシの木枠に合わせ上からボードをツラで追い貼りし、壁面はリシンの最小粒よりも小さく繊細なテクスチャーを持つかき殻塗料で一様に仕上げ、壁面のエッジや既存木枠の下地を柔らかく繊細にコーティングすることで既製品サッシと木枠が連なる所謂よくみる風景を消失させ空間全体にとってキャンパスのような立ち位置に見えるように考えた。その上で既存什器や建具は機能は活かしながら木目や石目がプリントされた建材部分を取り除き、ラワン材の木目を選定しかき殻塗料の繊細さに合わせながら木目の透かし具合を調整し染色している。

観葉植物は単純に鉢植えしたものを置くのではなく、高層階の角面という環境の中でより身体的にグリ―ンと向き合えることができないかを考え、書斎とダイニングの境界線上にグリーンを配置し、二つの空間を柔らかく有機的に仕切ったうえで床と鉢とダイニングのベンチを一体化した建築的な装置をマイクロセメントで同素材に仕上げた。ダイニングベンチの高さから上部分を鉢として彫刻的に台形に形作ることで鉢の法面はベンチの背もたれにもなり、そこに座ることで葉は自分の頭より上に存在し、まるで葉の木漏れ日の下で木の幹に持たれてひと休みするように普段はグランドラインでしか味わえない緑に包まれ触れ合える特別なひと時を高層階で浮遊感を持たせながら体験することができる。より緑を空間全体に溶け込ませるために解体して現しになった躯体天井の小梁部分の欠如箇所を鏡面で繋ぐことで日々の暮らしが無機質なコンクリートの天井に投影されることとなる。

私自身が生まれた時から十数年間マンションで暮らしてきた経験を踏まえ、大量に生産された既製品やプリント柄の建材を組み合わせたものに囲まれて毎日暮らすことより、自分の思いがこめられた空間で日々を過ごせることの方が豊かな日々を過ごせるのではないかと思う。古いヴィンテージのマンションではよく行われている手法を、どこでも拝見できるチェーン店のような一様な風景の日本の新築マンションの内部空間において、その安心安全な機能は活かしつつも住む人の思いを込めて空間生まれ変わらせるという昨今のマンションにおける住環境の作り方に対する新たなフックになってくれればと願っている。




GREEN:
小田康平(叢)

PHOTO:
足袋井竜也

完成日:
2024. JUN

所在地:
広島県広島市中区
鉄筋コンクリート造15階建て
50.0㎡(15.1坪)

MEDIA:
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