WORKS
1975
1975
CATEGORY:
SHOP
CONCEPT:
広島市中区のアーケード内のテナントビル3F。閉ざされた狭い螺旋階段から店内に入るアプローチの悪い物件をメンズサロン(男性専用美容院)に改修するプロジェクト。
視認性とアプローチの悪さを逆手にここに辿り着いた人だけが知ることができるファッション、アートやライフスタイルをお店が提案することで、また通いたくなる自分だけが知っている他人に教えたくない会員制のオンラインサロンのような空間ができないか考えた。
34坪の空間に対してスタイリストは1人。これからスタッフを雇用しながら席数を少しずつ増やしていく成長型のサロンにしたいとの要望もあり、8席のうち4席はカットスペースとして確保し、残りの半分はゆくゆくはヘアサロンとして使用していくことを念頭にギャラリーやカフェとしても使えるようなフレキシブルで複合的な空間づくりを提案した。
店名は1975、同名のイギリスのミュージシャンThe 1975が由来で私も過去にアルバムを聞いていたことがあり、音楽がクライアントとの共通のイメージソースとなった。
男性客はここと決めたら通い続けることからリピート率を高めることがメンズサロンを経営する上で大事な要素であり、また来たいと思わせるギミックが必要となる。
人知れない閉ざされた場所、男性がリピートするギミック、音楽が共通イメージ、これらの言葉から浮かび上がったのはレコードをディグする行為だった。
詰め込まれたレコードボックスから自分の琴線に触れるもの探し引きだす行為。サブスクが当たり前になった現在でもそのスタイルは生き続け、レコードを一枚一枚取り出し掘るたびにその世界に魅了されていく、
そんなストーリーを落とし込むことで、訪れる度に沼のようにハマっていくレコードショップのようなメンズサロンができればと考えた。
しかし大事なのは求める客層がレコードショップに足を運ぶDJや音楽に造詣の深い人々ではないということ。
系列店の顧客層から分析するとファッション、アートやビューティーに興味のある中性的な男性がメインとなる。
そこでレコードスリーブの連なりをスケールアウトさせ大きく透明なアクリル板34枚に見立て空間内にL型に自立させ配置することで透明感のあるアクリルでできたミニマルなレコードショップを表現している。透明な板の反復は狭く閉塞感のある空間に無限の広がりを与え、その間に様々な機能やストーリーを埋め込ませた。
L型の短い辺の方はカットスペースとなり、訪れた方が一番時間を長く過ごす場所となる。透明アクリルの連なりの中心に固定ミラー台を埋め込むことで透明な板の反復とミラーの全反射で織りなすオブジェクトはアートのような作品となり訪れた人の心を施術の間魅了するよう考えた。
長い辺はフレキシブルスペースに属することから透明アクリルを2枚サンドして金物により天井から吊ることでヘアサロンとギャラリーを柔らかく仕切り、等間隔に配置してその間に可動ミラーを収納した。このスペースではお店が提案する様々なカルチャーをギャラリーやポップアップショップとして体験することができる。可動ミラーは普段アクリルの連なりの中に収められているが、ミラーを使う時はそこからレコードをディグするように引き出すことでヘアサロンに空間が変貌する。
情報がネットやSNSに在ることが当たり前な現代、自ら足を運び探して知識や体験を得るそんなインテリジェンスな男心をくすぐる体験と仕組みを作ることが新しい顧客を獲得することになるのではないかと思う。
Detail
平面計画はシャンプーやレセプション、トイレなどインフラ部分をコアとして角に配置しその形をなぞるようにエントランス開口の軸からアクリルの連なりをL型に空間を縦横断させた。エントランスから入って左側をギャラリーとヘアサロンのフレキシブルスペース、奥側を固定のカットスペースとし、スタイリストが増えるたびにフレキシブルスペースがカットスペースに形を変えていく。
面台はギャラリーとヘアサロンの両方で使用するため可動となりどちらで使用しても問題ないデザインが必要となる。形状は三角柱で考え、スリットに手をかけることで簡単に持ち運び可能とした。軽さ故に水平方向の動きに弱いので漬物石を天板を外し挿入することでその場所に定着するよう考え、石を運んで固定するという原始的な行為で可動と固定の機能を両立させた。
L型長手の2枚のアクリルパネルは接合するためのオリジナル金物を利用してアクリルの間に絵やオブジェクトを吊るすことも可能となり、壁の機能を透明化させたことで作品を多層的にレイヤーを用いて展示することが可能となる。天井からオリジナルのコンセントボックスを吊り下げることでミラーに付随するインフラ機能を消失させて、よりアクリルの連なりが空間内に浮遊するように考えた。
螺旋階段のアプローチは紺色のマテルリアルを用いることで閉鎖的ゆえに空間全体が店舗のコンセプトカラーである青で発光したかのように見せることができた。
階段を上がって目に飛び込む世界は対比させて広く明るく白い空間となる。大きなアクリルを連続的に浮遊させることで空間に透明感や開放感をより強く与えるため既存開口を全て潰しあえて閉鎖的にするように試み、立地の悪さを逆手に取り、この場所に訪れることがひとつの体験として記憶に色濃く残るようになってくれたらと考える。
LOGO:
久保章(guide)
BOOK SELECT:
清政光博(READAN DEAT)
STEEL:
村田進(KAMO CRAFT)
PHOTO:
足袋井竜也
完成日:
2024. NOV
〒730-0035
広島県広島市中区本通1番4号 セレッソ金座街3F
OPEN
11:00~21:00
CLOSE
Tuesday
TEL
082-530-5254
URL:
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000715368/
MEDIA:
designboom
archdaily
CATEGORY:
SHOP
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広島市中区のアーケード内のテナントビル3F。閉ざされた狭い螺旋階段から店内に入るアプローチの悪い物件をメンズサロン(男性専用美容院)に改修するプロジェクト。
視認性とアプローチの悪さを逆手にここに辿り着いた人だけが知ることができるファッション、アートやライフスタイルをお店が提案することで、また通いたくなる自分だけが知っている他人に教えたくない会員制のオンラインサロンのような空間ができないか考えた。
34坪の空間に対してスタイリストは1人。これからスタッフを雇用しながら席数を少しずつ増やしていく成長型のサロンにしたいとの要望もあり、8席のうち4席はカットスペースとして確保し、残りの半分はゆくゆくはヘアサロンとして使用していくことを念頭にギャラリーやカフェとしても使えるようなフレキシブルで複合的な空間づくりを提案した。
店名は1975、同名のイギリスのミュージシャンThe 1975が由来で私も過去にアルバムを聞いていたことがあり、音楽がクライアントとの共通のイメージソースとなった。
男性客はここと決めたら通い続けることからリピート率を高めることがメンズサロンを経営する上で大事な要素であり、また来たいと思わせるギミックが必要となる。
人知れない閉ざされた場所、男性がリピートするギミック、音楽が共通イメージ、これらの言葉から浮かび上がったのはレコードをディグする行為だった。
詰め込まれたレコードボックスから自分の琴線に触れるもの探し引きだす行為。サブスクが当たり前になった現在でもそのスタイルは生き続け、レコードを一枚一枚取り出し掘るたびにその世界に魅了されていく、
そんなストーリーを落とし込むことで、訪れる度に沼のようにハマっていくレコードショップのようなメンズサロンができればと考えた。
しかし大事なのは求める客層がレコードショップに足を運ぶDJや音楽に造詣の深い人々ではないということ。
系列店の顧客層から分析するとファッション、アートやビューティーに興味のある中性的な男性がメインとなる。
そこでレコードスリーブの連なりをスケールアウトさせ大きく透明なアクリル板34枚に見立て空間内にL型に自立させ配置することで透明感のあるアクリルでできたミニマルなレコードショップを表現している。透明な板の反復は狭く閉塞感のある空間に無限の広がりを与え、その間に様々な機能やストーリーを埋め込ませた。
L型の短い辺の方はカットスペースとなり、訪れた方が一番時間を長く過ごす場所となる。透明アクリルの連なりの中心に固定ミラー台を埋め込むことで透明な板の反復とミラーの全反射で織りなすオブジェクトはアートのような作品となり訪れた人の心を施術の間魅了するよう考えた。
長い辺はフレキシブルスペースに属することから透明アクリルを2枚サンドして金物により天井から吊ることでヘアサロンとギャラリーを柔らかく仕切り、等間隔に配置してその間に可動ミラーを収納した。このスペースではお店が提案する様々なカルチャーをギャラリーやポップアップショップとして体験することができる。可動ミラーは普段アクリルの連なりの中に収められているが、ミラーを使う時はそこからレコードをディグするように引き出すことでヘアサロンに空間が変貌する。
情報がネットやSNSに在ることが当たり前な現代、自ら足を運び探して知識や体験を得るそんなインテリジェンスな男心をくすぐる体験と仕組みを作ることが新しい顧客を獲得することになるのではないかと思う。
Detail
平面計画はシャンプーやレセプション、トイレなどインフラ部分をコアとして角に配置しその形をなぞるようにエントランス開口の軸からアクリルの連なりをL型に空間を縦横断させた。エントランスから入って左側をギャラリーとヘアサロンのフレキシブルスペース、奥側を固定のカットスペースとし、スタイリストが増えるたびにフレキシブルスペースがカットスペースに形を変えていく。
面台はギャラリーとヘアサロンの両方で使用するため可動となりどちらで使用しても問題ないデザインが必要となる。形状は三角柱で考え、スリットに手をかけることで簡単に持ち運び可能とした。軽さ故に水平方向の動きに弱いので漬物石を天板を外し挿入することでその場所に定着するよう考え、石を運んで固定するという原始的な行為で可動と固定の機能を両立させた。
L型長手の2枚のアクリルパネルは接合するためのオリジナル金物を利用してアクリルの間に絵やオブジェクトを吊るすことも可能となり、壁の機能を透明化させたことで作品を多層的にレイヤーを用いて展示することが可能となる。天井からオリジナルのコンセントボックスを吊り下げることでミラーに付随するインフラ機能を消失させて、よりアクリルの連なりが空間内に浮遊するように考えた。
螺旋階段のアプローチは紺色のマテルリアルを用いることで閉鎖的ゆえに空間全体が店舗のコンセプトカラーである青で発光したかのように見せることができた。
階段を上がって目に飛び込む世界は対比させて広く明るく白い空間となる。大きなアクリルを連続的に浮遊させることで空間に透明感や開放感をより強く与えるため既存開口を全て潰しあえて閉鎖的にするように試み、立地の悪さを逆手に取り、この場所に訪れることがひとつの体験として記憶に色濃く残るようになってくれたらと考える。
LOGO:
久保章(guide)
BOOK SELECT:
清政光博(READAN DEAT)
STEEL:
村田進(KAMO CRAFT)
PHOTO:
足袋井竜也
完成日:
2024. NOV
〒730-0035
広島県広島市中区本通1番4号 セレッソ金座街3F
OPEN
11:00~21:00
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082-530-5254
URL:
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000715368/
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