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2020.07.26

811 new open

商店街の裏通りに位置する軽自動車が一台入るガレージスペース。

令和二年初め、この場所で多国籍な串焼屋を営みたいと依頼を受けた。店主は地元の老舗焼鳥屋で修行する前は型枠工や解体業の経験もあり少しアウトローな若者。

呉の屋台のような賑わいのある空間にしたいと希望を受け、改めて街の屋台の事を考えた。一度入れば隣のお客さんと話しが盛り上がり時にはそのまま喧嘩になったり…独特の賑わいや心の隙が生まれるのはやはり今にも壊れそうな空間の儚さにあるのではないかと考えた。

暗く歩道もなく人通りもまばらなこの通りにおいて、屋台のような儚い建築はしっくりするほど当てはまるであろうと考えた。しかしそこに違和感がなければただの人気のない路地裏の屋台として風景に溶け込んでしまう。

そこで考えたのがデザインとDIYの融合である。
DIYは私達空間デザイナーにとっては対極に値するものであり、クライアントからその一言が出れば私達の出る幕は一気になくなってしまう。

ただ今回、大工工事は宮大工でもある店主の父親が担当してくれるとのことだ。それを聞けた時、今までにない空間ができるのではないだろうかと想像した。

一度デザインしたものをDIYの本場であるホームセンターで購入できる材料に落とし込み、大工の父と型枠工の経験もある料理人の息子が仲間に助けてもらいながら作り上げていく。

誰でも手に入れることのできるアクリルの波板やアルミ複合板、垂木で誰も真似できない空間を作り上げる。

DIYの荒さや低価格からくる安心感や素材の儚さと、

デザインされたこだわりのディティールやそこから生まれる緊張感。

相入れない二つの事象をひとつの空間に落とし込む事でそこには交わることのない二つの要素の隙間が生まれるではないだろうか。

その隙間に吸い寄せられるように様々な人々が自然と集まり賑わいが形成されていければと考える。

 

コロナウィルスによって様式も変わっていく途中の令和二年春。空間もそれにならって変化していかなければならなかった。狭い空間ながらテイクアウトと客席の比重を限りなく同数に近づけるべくファサードには立ち飲み+テイクアウトカウンターをメインで設けている。窓のすぐ下では店主が焼き鳥を焼く姿がのぞけることでテイクアウトと客席の両方にとってのしずる感として通りにガツンと主張できるように考えた。メニューボードはアルポリを角で突き合わせで貼り角面をマスキングテープ風塗装で仕上げた。躯体部分との隙間をエントランスとしグラフィックデザインを施したビニールカーテンで区切り客席へと繋がらせている。

 

811
広島県呉市中通3-8-11
TEL 0823-27-6177
open 17:30-26:00
close 不定休
@kure_811