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2021.08.04

金光酒蔵 蔵元直売所 new open

 

広島県東広島市黒瀬町にある
創業明治13年のから続く酒蔵 金光酒蔵の直売所の改修工事。

国道沿いから見える登録有形文化財である酒蔵の大きな壁面は酒造りの歴史が積み重なった地層を見ているように感じた。

焼杉の羽目板貼りと漆喰とこの街の特徴の一つである赤煉瓦の屋根。三つの素材が水平に重なっていくことで境界に現れる二本の線。伝統を長い間守り積み重ねることで生まれた美しい水平ライン

隣接する直売所は酒蔵から続く水平ラインを意識しつつ、一部分が有機的に隆起するような新しいラインを作り上げた。

上部のラインは既存建物の少し飛び出ていた庇部分によりボリュームを持たせ、漆喰で仕上げている。人がこの空間に接する点であるエントランスの部分を隆起させる事で、直売所に訪れるすべての人々が蔵の伝統や歴史を新たな形に変える起点になるように、その変化を恐れない酒蔵であって欲しいと思いを込めた。

もう一つのラインはエントランスを中心に左右で機能を分けている。向かって右側は昔の酒屋が道に隣接して縁側から直接上がれるような造だった文献を目にして同じように縁側の機能を持たせたベンチを作っている。

入り口左側は窓台を人研ぎで仕上げた。廃棄予定の日本酒のガラス瓶を砕いて混ぜて研ぐことによって近代の技術であるガラスを化石のように歴史の地層に封じ込めた。

内部空間は異なる素材を有機的なRラインで形成することで、発酵タンク内において泡が重なり合い増殖していく姿を目にした時に感じた透明な液体の持つ生の躍動感を空間に表現している。素材は煙突の煉瓦や藍色の前掛け、銅板や亀甲金網など酒蔵において自然と取り入れられているマテリアルをそれとは異なるの使用用途として転換させている。

畑に囲まれた穏やかな水平ラインに生まれた小さな隆起点。これは受け継がれてきた長い歴史を守りながらまだ見ぬ新しい景色に挑戦し続けているクライアントの思いの現れだと思う。

この想いが新しくできた隆起を起点にアンテナのように波紋状に広がってくれればと願っている。

 

金光酒蔵 蔵元直売所
〒739-2622
広島県東広島市黒瀬町乃美尾1364-2
TEL 0823-82-2006
OPEN
10:00~17:15
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Sunday Holiday

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