INFORMATION
2025.09.29
new works 左_右
広島県呉市の丘陵地に建つ「左_右(さゆう)」は、改修と増築という異なる時間軸を重ね合わせながら、生活のかたちそのものを再定義した建築プロジェクトである。
築70年を超える木造平屋の改修から始まり、敷地奥への新たなコミュニティ棟の増築を経て、住まいは家族の拠点を超え、人と人、人と場がゆるやかに関わり合う“関係の建築”へと進化した。
― 分節しながらつながる ―
改修では、既存平屋の増改築の履歴を読み解き、分節点を見出した上で一部を解体。中庭とエントランスを貫くようにRC造のヴォイドを挿入し、空間を大胆に分けながらも光や風、動線で有機的に結び直した。
個室棟、LDK棟、RCヴォイド、コミュニティ棟がそれぞれ自立しながらも連関し、個の時間と共の時間が連続する暮らしの構成を生み出している。
LDK棟(改修)
LDK棟は生活の中心であり、日常を編集する空間として再構築された。家電などの既製品を木や鉄で覆い建築に取り込むことで、機能を保ちながらも生活感を抑制。
既存梁を現しにした吹き抜けには、一本の黒い電線に沿って二灯のストリングライトが架けられ、古い梁と新しい造作の対話を浮かび上がらせる。
一段掘り込まれたリビングは、外部に閉じながらも西面の低窓から街の気配を感じ、中庭の緑を身近に引き寄せる“内に開く”心地よさを生み出している。
RCヴォイド(改修)
LDK棟と個室棟を分けるRCヴォイドは、光と時間を媒介するハブ空間である。
二つの天窓と中庭の開口から拡散光を導き、打放しコンクリートの面に淡く投影される光は、木造との対比によって静謐な緊張をつくり出す。
エントランスのアクリルベンチが一瞬の光を受け止めるとき、空間は時間を感じさせる聖域のような佇まいを見せる。
可動間仕切りによって棟同士の関係を自由に変化させることで、季節や用途に応じて“暮らしを編集する建築”が実現した。
コミュニティ棟(増築)
RCの基壇と鉄骨構造による増築棟は、改修で生まれた生活の核を外へと拡張する装置である。
かつての納屋を解体し、敷地の形状に沿って三角状に掘り込み、地形に寄り添う半地下構造として構築。
内部には壁を掘り込んだベンチや大きなレセプションテーブルを設け、訪れる人を空間全体で迎え入れる。
螺旋階段を上がると二層のコミュニティスペースが垂直に展開し、地形・光・人の動きが交錯する。
外壁にはシルバー塗装を施したフレキシブルボードを用い、意図的に残した目地に雨樋を仕込むことで素材の厚みと陰影を際立たせた。
南面の斜め壁が新旧をつなぐ分節点となり、光の拡散によって表情を変えながら、無機的な建築に生命感を与えている。
個室棟(改修)
個室棟は、外界との距離を繊細に調整する空間である。
壁面一体の開き雨戸は開口や視線を自在に制御し、光と影の濃淡を日々変化させる。
その斜角が漆喰壁に微妙な陰影を生み出し、外観に静かなリズムを与える。
この形態は増築棟の斜壁と呼応し、時代や構法の異なる建築群を一体化している。
このプロジェクトが目指したのは、古民家の再生ではなく、“住むという行為の更新”である。
個と共、公と私、内と外といった対立軸がグラデーションのように融け合い、分節しながら連続する新しい建築のあり方を提示する。
既存構造を読み替え、新たな空間を挿入し、人の行為や時間を編み込むことで、
「左_右」は過去と未来、閉じと開き、個と共同を暮らしの中で共存させる。
改修と増築を経て生まれたこの住宅は、“家族を守る殻”を超え、人・空間・時間の関係をほどき、再び結び直すための装置として存在している。
そして建築は単なる器ではなく、“生き方そのものを編集するメディア”となることを目指している。
DIRECTION:
榎本太一(E.)
GREEN:
長尾浩(長尾作庭研究所)
LOGO:
久保章(guide)
PAPER CORD WEAVING:
杉原祥太(sumu.)
ACRYLICS:
黒瀬光彦(Life Market)
特殊金物:
村田進(KAMO CRAFT)
木製什器:
井上匠(Takumi Wood Works)
特殊塗装:
庄野樹護(SHONO PAINT WORKS)
MOTION GRAPHIC / EDIT:
田中謙吾
PHOTO:
足袋井竜也(足袋井写真事務所)
左_右 (さゆう)
アトリエ/ギャラリー/モデルハウス
〒737-0803
広島県呉市郷町2-7
TEL 0823-36-3883
OPEN
10:00~20:00
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不定休








